Sanpouji Storyteller

交錯する都会の中で織りなす5人の男女の物語

眼鏡とベストとギンガムチェック(3)ー水の章Ⅰ

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第3章

 

うるさい……

あーうるさい!

 

わかったよ。もうわかったから。

手を伸ばしてスマホのアラームを止めた。

 

はぁ。

 

毎朝毎朝ストレスでしかないけど、

他に起こしてくれる人もいないし一人で起きなければならない。

仕事の日は仕方ない。

いい大人が寝坊して遅刻なんて、さすがにどうかと思う。

 

一番腹立たしいのは休日の朝の不快な目覚め。

それは選挙カーだったり無邪気な子供の声だったり

廃品回収の車だったりバカな犬だったり…

 

この人生の中で一番嫌いな事は「安眠妨害」

 

ぼーっとした頭でやっとこ起き上がり、

のそのそと身支度を済ませ、軽く朝食を食べる。

それでも、今朝は天気が良いから気分がいい。青空って素敵。

白いシャツとスキニーデニム、赤いカーディガンを羽織り、

この頃になるとどうにか目を覚ました体で玄関を出た。

 

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美波は仕事が好きだ。

 

自分のデスクはいつもきれいにしている。

そうする事で仕事が出来るカッコイイ女に見えるような気がした。

 

隣には同期の奏太が寝癖のついた髪を気にしながらパソコンに向かっている。

出張の多い業務なので一緒に行くこともある。そんな時も奏太は若いのに頼れる男だ。

話も面白いし気も効くし楽しいお酒が飲める貴重な人材だ。

 

何より波長が合う。

 

朝のミーティングを終え、スケジュールを確認した。

来週から3日間のスケジュールで奏太と上司の3人で出張だ。

 

場所は沖縄。

 

初めての沖縄。

 

仕事とは言え、なんてスバラシイ!

いや、会社の経費で沖縄に行けるなんてホントにスバラシイ!

 

上司さえいなければ…。

 

嫌いとは言わない。

でもすこぶる苦手なタイプの上司。

ネチネチ小言を言われ、美波のリズムを木っ端微塵にする男。

いつもちょっとコジャレたベストを着た吉田と言う眼鏡の男だ。

 

忘れよう。いないことにしよう。

大丈夫、奏太がいる。

 

何気なく窓の外を見る。

青空に新緑の木々が揺れていた。

ランチは奏太を誘って、最近見つけた小さなフレンチのお店にしよう。

 


【フルver】君のうた/嵐(cover)