Sanpouji Storyteller

交錯する都会の中で織りなす5人の男女の物語

眼鏡とベストとギンガムチェック(26)-海の章<エピローグ>

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エピローグ~海の章の〝読標(よみしるべ)〟

 

ここでは、おそらく作者の未熟な文章力で意図していたことが伝わっていなかったであろうという点にたち、本作のポイントを整理したい。

テーマ曲でも聴きながらお楽しみください。

 


ハッピーエンド / back number (cover)

 

〝よみしるべ〟その1

作者が、この作品を通じて描きたかったのは、「こころの成長」だ。多くの主人公たちの名前は、カタカナであったのは、その現在の姿を現していた。名前というのは、親が子供に将来の幸せを願ってつけるもの。特に漢字には、その文字、一つ一つに親の夢みたいなものが詰まっていたりする。

カタカナであったのは、彼らが、そこに至っていない状態を意味していた。その一方、山本家の人々は、最初から漢字で表記されるのだが、そこに使われた文字は、「仁」や「義」という文字。彼らの生き様は、ある意味、その名前に負けていた。

また、ルイーズやチューヤンは、外国人なので端からカタカナであるわけだが、彼女たちは、この作品の善悪や仁義の中心にいるきわめてニュートラルな存在として位置づけていた。

さらに、脇役の大将やマダムといった、いわゆる最後まで名前が出てこなかった彼らは、常に主人公たちを前に踏み出せてくれるエンジンでもあり、実は、主人公の中に存在する「進む力」の役割を果たしてくれていた。メインのオオタ、ユージ、イツキは、彼らの言葉で、結果はどうあれ前に進むきっかけをつかもうとしていた。

彼らが次に進むとき、その名前は、自然と漢字に変わっていった。作者が、最もこだわった部分だ。特にイツキが樹希となるパスポートのシーンや、ユージが祐司になる夜の空港のシーンは、作者も気に入っている。

 

〝よみしるべ〟その2

この作品には、実は、ふたつの物語の時間軸が重なり、折り合っている。オオタとタエコのストーリーと、ユージとイツキのストーリーは、ある意味、時間を超えてつながっているのだ。そのキーワードは、「2」。時には「V」というサインで表記されたり、そして水鳥の形として出てくる。人は一人では生きていけないというメッセージをここに込めながら、随所に散りばめられていた「2」という数字は、人間にとってのコミュニティの最小単位だ。

いつも喧嘩したり、悩んだり、ノルドの店内は騒々しいが、常にどんなことも二人で話すことから解決していく、そんな思いを込めていた。

また、作者の頭の中では、タエコとイツキは、ほぼ同一的な人物として描かれていた。映画なら一人二役のイメージだった。

因みにオオタが、最後の場面に出てこないのは、ユージを成長させ、その役割を終えたことを意味している。ある意味、主人公のユージにとって大将やマダムと同じ存在になったのだ。

 

〝よみしるべ〟その3

最後に作者が、大好きなシーン(最も力を込めたシーン)を主人公ごとにランキング形式でご紹介。

  

第10位 マダム

月例のパーティーのあと、イツキ、ナツキと3人で話すシーン

 

第9位 ショータ

宴席で、大阪の立ち食いそば屋のもめ事を得意そうに披露するシーン

 

第8位 ナツキ

オオタが店内で激怒している場面を外から眺めるシーン

 

第7位チューヤン

ユージと二人でベトナム料理店でのカタコトの日本語になるシーン

 

第6位 ルイーズ

ノルドの店にふらりと入ってくるシーン

 

第5位 大将

ユージに車のカギを渡し、背中をたたくシーン

 

第4位 タエコ

中央線の車内でオオタに「これ新宿行きますか?」からの一連のシーン

 

第3位 ユージ

クリスマスイブの夜、イツキを見送った夜の空港でひとり眺めているシーン

 

第2位 オオタ

夜の公園で昔のことを思い出しながら、涙をこらえながら、星を見ながら咳込むシーン

 

第1位 イツキ

渋滞のバスを降りて、ターミナルで一人泣き崩れるシーン

 

自画自賛にお付き合いいただきありがとうございました。(笑)

MICHIO KITAMI