Sanpouji Storyteller

交錯する都会の中で織りなす5人の男女の物語

眼鏡とベストとギンガムチェック(10)-嵐の章Ⅱ

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第10章 

 

数日後、会社に向かい歩いていると、前方に何処か見覚えのある後ろ姿が自分の勤めている会社に入っていった。

その人物の名は「才波 銀」そう、そば屋で仲裁に入ってくれたあの男である。

なんと銀は、中途で自分の勤めている総合商社「当月堂」に転職してきたのである。

「よう、先輩よろしく」

これが会社で銀が自分にかけた最初の言葉である。 

銀は気さくで、誰とでもすぐ仲良くなれる特技と言って良いほどの才能があった。

一方私と言えば、一人で居る事が好きで俗に言う孤独を愛する者である。

何の共通点もない二人だが、妙に馬が合ったのか直ぐに打ち解けていった。

 

そんな二人に転機が訪れた。

 

我が社は、創業大正初期と歴史はあるものの、総合商社と謳ってはいるがその実メイン

を張る商品がまったく無く、全てにおいて二番煎じである、故に利益率が悪い、と言う

事は当然給料も安い。

そんな会社ですが、先日社長の交代があり新社長が就任した。

先代は無事此れ名馬主義で、細く長く石橋を叩いて渡るそんな感じのタイプであったが

新社長は野心家タイプであった。

就任早々、当月堂ステップアップ戦略と名を打ち会社の新方針を決める会議が連日繰り

返された。

数日後方針が決まり社員に伝えられた。

現在我社は、そこそこの需要があり、そこそこの利益が望める商品のラインナップしか

無い。

そこそこの需要があるとゆう事は、メーカーとしても沢山の商社と取引をしたい。 故

に何処の商社でも扱える。

当社はまさにそんな何処でも扱える商品しか扱っていない、何処でも扱えると言うのは

最終的に価格競争になってしまう。

一つの商品で価値を持続するのは、30年と言われている。

当社が扱う商品は全て20年から30年以上のラインナップばかりである、そこで此れか

らの当社の主力商品たる品物を見つけて独占契約を結んでくる。

期間は2年間でプロジェクトを立ち上げるとの事だ。

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プロジェクトが立ち上がり翌日メンバー5人が招集された

メンバーの中にこの堂島 城二も選ばれた。

メンバー5人は、それぞれ人数を集めチームを作り、早速行動に移っていった。

チーム編成は大体2~5人程度で、チーム代表がベテランであるほど人数が多い。

チーム代表の中で一番の若手であった自分は、気兼ねなく仕事がしたいとの希望もあっ

て銀を誘って2人でチームを立ち上げた。

自分以外のメンバーはみんなベテランで各方面に独自のコネクションを持っており、そ

の方面からのアプローチでせめた。

例えば家電系にコネクションを持つ先輩は、新技術により驚異の熱交換率を実現し恐ろ

しく電気代が抑えられるクーラーの独占販売契約またある先輩は、強度こそ従来の約

0.8倍と劣るものの半年海水につけておくと分解が始まり約一年で完全に消滅する環境

重視の釣り糸なんて物もあった。

一方自分は若手と言う事もあり、大きなコネクションがあるわけでもなし途方に暮れて

いたそんな時、銀が学生の頃の友人から面白い話を聞いたと言って部屋に飛び込んでき

た。銀の話によると、大学の研究室にいる友人が新たな金属の精製に成功したというのだ。

その金属の特徴は、羽毛の様に軽く強度はチタン並み、また形状記憶の能力も併せ持つ

と言う優れものとの事、欠点は金属の塊は簡単に出来るらしいのだが、加工が物凄く大

変で、一定の力で加工しないと金属の構造が崩壊してしまい、まったく使い物にならな

いガラクタになってしまうと言う品物らしい。

 

早速、銀の友人に会い詳しい話を聞く為、関西国際空港に向かった。

銀はかの有名大学MITの出身で、主に鉱物の研究をしていたとの事その為、金属系に詳

しい?いや秀でている人物には沢山の友人がいるとみちすがら話していた。

その友人の名は「タクミ・ジェームズ・ウィリアム」このタクミなる人物、銀いわく結

構な偏屈でとりあえず、銀の友人なので話は聞くが契約等に関する話は別で、才波城二

が気に入るか気に入らないかで今後の対応全然違うと脅されながらむかった。

今回、銀のコーディネートは完ぺきだった。

仕事の話は後回しで先ずは釣りに行こうと言うのだ。

と言うのも二人の趣味が釣りである事とタクミが無類の勝負好きである事、勝負好きと

言ってもギャンブル狂と言う事ではなくどっちが早いのか、どっちが大きいのかと言っ

た勝負が好きな単なる負けず嫌いとも言うがそんな人物である為こんな企画(勝負)に

出たのである。

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私たちはマサチュウセッツ州の港町グロススターより船を出し釣り開始、釣り物はマグ

ロである。

港を出発して二時間、勝負の時は来た。

右舷より二本がタクミ・右舷より二本が城二の竿である。

 

先ず最初にヒットしたのは、タクミの竿、ヒット以外の竿を回収しようとしたら今度は

城二の竿にヒット、二人の勝負の開始である。

マグロ程大きな魚になると一日に何度もチャンスがあるわけでは無いので、二人とも吊

り上げたいのはやまやまだが、城二はキャプテンに最初にヒットしたのはタクミなの

で、タクミ優先で操船するよう指示を出した。

そのかいあってタクミは400kgオーバーのマグロをゲット、一方城二はラインブレイ

クでバ・ラ・シである。

残り時間一時間、気を取り直してもう一度勝負、今度は城二の竿にヒット、かなりの手

応えであったが、上がってきたのは390kgタクミの勝利で幕をとじた。

城二は、今回の話は無かったものと諦めた瞬間、タクミがナイスファイト・ナイスフィ

ッシングと声をかけてきた。

タクミは、城二の潔さに男気を感じ、興味をもったと言うのだ。

そこからは、話はトントン拍子で進み契約まじかととなりタクミを連れ日本に帰国した。

 

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